私のネイルスクールで、

あるスタッフがネイルの講師として

スクールで教えることになった時、

これまで私の授業を見てきた彼女は、

自分にはそんなことができるのだろうかと

不安でいっぱいな表情をしていました。

 

彼女は技術、経験共に

充分な実力があったのにもかかわらずです。

そして、彼女が言った通り、

初めて担当した授業はしどろもどろ、

自信のなさや不安な気持ちが痛いくらい伝わってきました。

「私、先生みたいに上手く話せない。

人を教えるなんて向いてないんです。」
とすっかり肩を落としてしまっていました。

「大丈夫、必ずできるから!」

 

私は彼女に
私の授業を毎日ビデオに撮って、見るように言いました。

すると、彼女はそれから毎日

スクールが終わってからその録画を見て、

授業で私が言ったことを

すべてノートに書き写しました。

そして、それを「台本」のようにすべて暗記し、

自分の授業でまるで同じセリフを話したのです。

彼女はそれを半年毎日欠かさず続けました。

 

そんなある時、彼女がこんなことを言ってきました。

「先生、私毎日先生の話を真似しているうちに、

すごいことがわかったんです!」

「私は最初、先生はもともと話が上手な人で、

人を笑わせるのが得意な人だから、

みんなを引きつけることができるんだ、

と思っていたんです。

でも、全然違った。
先生は、生徒さんに

いかにわかりやすく伝えるか

だけを考えて話しているんだと思いました。

生徒さんの立場に立って、

どんな言葉を選べば伝わるかとか、

図に描いた方が伝わるのかとかを常に考えている。

そして言いっぱなしでなく、

常に生徒さんの表情を見て、

ちゃんと伝わっているかを確認しているんですよ。

まだダメだと思ったら、

また違う言い方をしたりして、

何度でもわかるまで付き合うんです。」

 

「私は、自分が上手く話せるのかとか、

失敗しないかとか、

自分のことしか考えていなかった。

それじゃあ相手に伝わるわけないですよね。」

私は思わず「素晴らしい!」

と叫んでしまいました。

それから彼女は、

これまで自分が何となくやってきた

ネイルの技術や接客の方法などについて、

一つひとつ分析し、

なぜそういうことをするのかということを言葉にして、

生徒さんに伝えました。

言葉でわかりづらければ、

図で示したり、伝える方法を工夫しました。

いつしか

「先生の話は、とっても面白いです!」
「先生に教わることができて本当に良かったです。」
という言葉を生徒さん達からもらうようになりました。

人を教えるということは、

先生を成長させます。

ですからスタッフが先生になることで、

スタッフが成長するのです。